日本では橋梁やトンネル、配管設備などの、インフラ構造物の老朽化が進行し、保守・点検業務の重要性が高まっています。一方で、高所や危険箇所の作業を担う人材の確保が難しくなり、インフラ点検の人手不足は深刻な課題です。
本記事では、インフラ点検における人手不足の背景と現場への影響を整理し、デジタル技術を活用した対策を具体的に紹介します。インフラ点検の効率化や省人化に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
▼この記事を読んで分かること
- インフラ点検の現場で人手不足が進む背景
- インフラ点検現場での人手不足がもたらす影響
- インフラ点検における人手不足への解決策
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インフラ点検の現場で人手不足が進む背景
インフラ点検の現場において、人手不足が深刻化する背景について、一つひとつ確認していきましょう。
▼インフラ点検の現場で人手不足が進む背景
- 背景①|インフラ老朽化問題による需要増加
- 背景②|高齢化による熟練技能者の引退
- 背景③|若手人材が流入しにくい業界構造
背景①|インフラ老朽化問題による需要増加
インフラの老朽化が進み、点検や補修のニーズが急激に増加しています。
一般的にインフラの耐用年数は50年とされています。日本では、多くのインフラが高度経済成長期に整備されたため、寿命を迎えつつあるのが実情です。
国土交通省によると、2023年時点で建設後50年を超える道路橋は全体の37%、トンネルは25%を占めています。2040年には、インフラの過半数が耐用年数を超える見込みです。
こうしたインフラの老朽化問題によって、定期点検の頻度は増し、保守作業の必要性も高まっています。多くの点検作業が求められている一方で、人員の確保が追いついていないのが現状です。
特に地方自治体では、予算や人材の制約により老朽化インフラへの対応が遅れる傾向にあります。インフラの老朽化による事故も増加しており、以下にその代表的な事例を紹介します。
【事例】インフラの老朽化による事故
インフラの老朽化によって引き起こされた主な事例は次の通りです。
- 2012年:山梨県笹子トンネル 天井板崩落事故
- 2021年:和歌山県和歌山市 水管橋崩落
- 2025年:埼玉県八潮市 道路陥没
2012年の山梨県笹子トンネル 天井板崩落事故は、日本のインフラ老朽化問題の深刻さを浮き彫りにした事例です。原因は、ボルトの老朽化と点検の不備によるものとされ、この事故をきっかけにトンネルや橋梁の、5年に1度の定期点検が法制化されました。
2021年に和歌山県和歌山市で起こった水管橋崩落は、市内約6世帯が断水する影響を及ぼした事例です。目視点検では異常を把握できなかったことから、インフラ点検におけるデジタル技術導入の重要性が顕在化しました。
2025年に埼玉県八潮市で起きた道路陥没は、下水道管の腐食が原因とされています。
背景②|高齢化による熟練技能者の引退
熟練技術者の高齢化も、インフラ点検の人手不足を深刻化させている要因のひとつです。建設業全体で見ると、55歳以上の就業者は、2024年時点で全体の36.7%を占めており、2005年時点と比べると7.3%も増加しています。
今後10年以内に多くの熟練技術者が離職する見通しである一方、それを補完する若手人材の確保は不十分です。
ノウハウを持つ人材の多くが高齢であり、若手技術者への引き継ぎが十分に進んでいません。高齢者の退職によって技術が断絶されれば、点検の質そのものが低下します。
背景③|若手人材が流入しにくい業界構造
建設業界は、若手人材が流入しにくい構造的な課題を抱えています。考えられる理由は大きく3つです。
- 業界への認知度の低さ
- 賃金水準の低さ
- 労働環境
学生や若手社会人は、インフラ点検の実態や意義を知る機会が乏しく、進路選択の候補に入りにくい傾向があります。また、賃金水準の低さも就職先として敬遠される要素のひとつです。
建設技能労働者の平均年収は、2024年時点で約432万円とされており、全産業平均の464万円と比較すると見劣りします。
近年、業界全体で賃上げの動きがあるものの、若者にとっては魅力的な条件とは言いにくい状況です。危険を伴う現場作業や不規則な勤務体制も、就職先として選ばれにくい要因と考えられます。
業界全体として、若年層に対する積極的な情報発信と待遇改善が求められています。
インフラ点検現場での人手不足がもたらす影響
ここでは、人手不足がもたらす具体的な影響について紹介していきます。
▼インフラ点検現場での人手不足がもたらす影響
- 影響①|点検作業の遅延
- 影響②|作業の簡略化による早期老朽化
- 影響③|緊急対応のリスク増加
- 影響④|時間外労働に対するコストの増加
影響①|点検作業の遅延
人手不足が続くインフラ点検の現場では、点検作業の遅延が懸念されます。なぜなら、限られた人員で点検作業を担う必要があり、1件あたりにかけられる時間が不足するからです。
点検作業が遅延すると、設備の劣化や異常を早期に把握できず、補修のタイミングを逃す恐れがあります。その結果、小さな不具合が深刻な損傷へと発展し、大規模な修繕工事を余儀なくされるリスクも生じます。
また、点検の遅れは公共サービスの安定にも影響を及ぼしかねません。道路や上下水道などのライフラインに不具合が生じた場合、地域住民の生活に大きな支障がでます。
影響②|作業の簡略化による早期老朽化
インフラ点検において作業が簡略化されると、構造物の早期老朽化を招くリスクが高まります。簡略化された点検では、本来必要な手順や精度が確保されにくく、異常の早期発見が難しくなるためです。
例えば、ひび割れや腐食などの初期兆候は、目視では発見できないケースも多く、表面的な確認だけでは見逃される恐れがあります。記録やデータの取得が不十分になると、点検履歴の蓄積や経年劣化の傾向把握が難しくなり、結果的に早期老朽化が加速します。
影響③|緊急対応のリスク増加
インフラ点検の現場では、人手不足により緊急対応のリスクが増加する可能性があります。本来であれば、早期に対処できた箇所が見逃され、突発的な事故が起きやすくなるからです。
緊急対応が増えると、自治体や企業の財政にも大きなダメージを与えます。例えば、橋の損傷が原因で通行止めが発生すれば、交通網への影響だけでなく、復旧工事に膨大な費用と時間がかかります。
また、業務負荷が増加し、休職や離職を招く恐れもあるため、デジタル活用などで効率的な点検体制を整えることが不可欠です。
影響④|時間外労働に対するコストの増加
インフラ点検の現場で人手が足りないと、限られた作業員に過度な業務が集中し、時間外労働が発生します。その結果、企業側には割増賃金の支払いや労務管理コストが発生し、経営面での負担が増します。
「働き方改革関連法」の改正も人手不足の中小企業にとって大きな負担です。
これまでは、中小企業の時間外労働に対する賃金の割増率は一律25%でした。しかし、2023年4月からは、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金が50%に引き上げられ、労力コストが一層重くなります(「働き方改革関連法に関するハンドブック時間外労働の上限規制等について」厚生労働省)。
違反が発覚すれば、行政指導だけでなく企業の信用失墜にもつながりかねないため、経営悪化を懸念する企業も少なくありません。
こうした課題を解消するには、人的リソースの補充だけでなく、デジタル技術の導入による業務効率化が必要です。次章では、人手不足を解決するためのテクノロジー活用策について詳しく解説します。
インフラ点検における人手不足への解決策
深刻化するインフラ点検の人手不足に対しては、従来の採用強化だけでは限界があります。ここでは、業界で注目されている具体的な解決策を4つご紹介します。
▼インフラ点検における人手不足への解決策
- 解決策①|ロボットを導入し点検作業の負担を軽減する
- 解決策②|RTK測位によって現地測量の手間を削減する
- 解決策③|AI画像診断により点検作業を効率化する
- 解決策④|5G通信で遠隔地からのリアルタイム点検を実現する
解決策①|ロボットを導入し点検作業の負担を軽減する
インフラ点検の現場にロボットを導入することで、作業負担の大幅な軽減が期待できます。従来は人が直接立ち入っていた危険箇所や狭小空間も、ロボットによって安全かつ効率的に点検が可能です。
例えば、NBKマーケティングの「Hibot Float Arm(フロートアーム)」なら、人が入れない場所の目視点検・配管の肉厚測定・3次元測定などを代替できます。
また、ドローンの活用も有効です。橋梁やダムの高所も人手を介さずに点検でき、操作はリモートで行えるため、危険性が大幅に低減されます。
ただし、飛行には各自治体のルールに従って事前申請が求められるため、注意が必要です。
解決策②|RTK測位によって現地測量の手間を削減する
RTK(Real Time Kinematic)測位を導入すると、リアルタイムで正確な位置補正が可能となり、現地測量の手間を省けます。RTKは、従来のGPSよりも、はるかに高精度な位置情報を取得できる技術です。
ドローンを使った空撮や構造物の3Dモデリングにも高い効果を発揮します。
特に、複雑な地形や広範囲を対象とするインフラ点検では、測位の正確性が不可欠です。RTKはGNSS(全地球衛星測位システム)と連携しているため、電波干渉が発生しやすい環境でも、高精度な測位を実現します。
点検精度の向上にもつながるため、現場の生産性と品質を両立させたい企業にとって有効な選択肢です。
解決策③|AI画像診断により点検作業を効率化する
AIを活用した画像診断は、インフラ点検の効率化と省人化を同時に実現できる手段です。
撮影した画像データをAIが解析することで、ひび割れや腐食、変形などの異常を自動的に検出できます。膨大な画像の中から異常箇所を瞬時に抽出できるため、人の目による確認作業を削減し、作業効率が向上します。
特に、コンクリート構造物のひび割れ検知や塗膜の劣化判断など、形状変化を伴う異常の発見に有効です。
AIの精度は年々向上しており、今後さらに信頼性が高まることが見込まれます。そのため、AI技術動向を把握し、スモールスタートで導入を進めることがおすすめです。
なお、NBKマーケティングでは、現場の画像から異常を自動検知するAI「LiLz Guard(リルズガード)」を提供しています。気になる方は、以下のURLから詳細をご覧ください。
解決策④|5G通信で遠隔地からのリアルタイム点検を実現する
5G通信の活用により、遠隔地からリアルタイム点検ができるようになります。
例えば、点検用ロボットやドローンに5Gモジュールを搭載すれば、現地で撮影した映像を高画質のまま管制室へ送信可能です。また、AIと連携することで、異常の発見から対応指示までの時間を大幅に短縮できます。
このように5G通信は、インフラ点検の遠隔化と効率化に大きく貢献します。
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まとめ:インフラ点検の人手不足にはデジタル技術を活用しよう!
インフラ点検の現場では、老朽化インフラの増加や技術労働者の高齢化によって、人手不足が進行しています。点検の遅延や精度低下、緊急対応の増加といったリスクが顕在化しており、業界全体の共通課題と言える状況です。
こうした課題に対しては、ロボットやAIなどのデジタル技術の導入が不可欠です。ぜひ本記事を参考に、インフラの維持に向けた対策を進めていきましょう。
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