
化学プラントにおける人手不足や設備の老朽化を背景に、「DX」の必要性を強く感じている方は多いのではないでしょうか?
しかし「何から手を付けるべきか」「本当に自社で運用できるのか」といった不安を抱え、第一歩を踏み出せないケースも少なくありません。
そこで本記事では、化学プラントにDXを導入して得られる5つの効果や、失敗を避けるための具体的な3ステップをわかりやすく解説します。大手企業の成功事例も紹介しているため、自社に合う施策のヒントが得られるはずです。
現場の安全性と生産性を向上させたい保全・運転管理の担当者様は、ぜひ最後までご一読ください。
▼この記事を読んで分かること
NBKマーケティングでは、現場課題の整理から最適なDX施策の設計・導入支援まで一貫してサポートします。貴社に最適なDXの進め方を知りたい方は、ぜひお問い合わせください。
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化学プラントのDX化とは|なぜ今求められているのか?

化学プラントのDXとは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用し、現場業務をデータ化して根本から変革する取り組みを指します。今DX化が進められているのは、人手不足や、カーボンニュートラルへの対応が急務となっているからです。
具体例としては、これまで目視確認していた設備点検をセンサーで自動化し、過去の運転データをAIで分析して異常の予兆を検知する事例などが挙げられます。
こうした技術の導入により、少ない人数でも安全を担保しながら、複雑化するプラントの安定操業を維持できるようになります。ペーパーレス化などの「IT化」にとどまらず、現場の課題をデータで解決し、生産性向上と安全性を両立させることがDXの真の目的です。
化学プラントのDXを進めることで得られる効果

ここでは、化学プラントのDXを進めることで得られる5つの効果について確認していきましょう。
▼化学プラントのDXを進めることで得られる効果
- 効果①|生産性が向上する
- 効果②|品質が安定する
- 効果③|点検や記録業務を自動化できる
- 効果④|作業の属人化を防げる
- 効果⑤|ノウハウをデータ化して技術継承を進められる
効果①|生産性が向上する
DXを推進する大きなメリットは、プラント全体の生産性が向上することです。IoTセンサーなどを活用すると、設備の状態を24時間監視できるようになり、重大な停止トラブルを未然に防げます。
例えば、ポンプやモーターなどの温度・振動データをリアルタイムで収集すれば、AIがわずかな故障の予兆を瞬時に検知してくれます。設備の状態に応じてメンテナンスできるようになるため、「定期保全」から「状態基準保全」への移行が可能です。
予期せぬ設備トラブルによるダウンタイムを最小限に抑えつつ、過剰な部品交換といったコストも削減できます。
効果②|品質が安定する
製品の品質が安定し、不良品の発生率を抑えられる点も効果のひとつです。製造プロセス中のデータをリアルタイムで可視化することで、異常が発生した際に即座に対応できる環境が整うためです。
具体的には、反応槽における温度や圧力、流量といった複雑なパラメーターの微妙なズレをセンサーが常に計測します。正常な範囲から外れそうになった場合、AIが品質異常のサインとして早期にアラートを発報してくれる仕組みです。
異常が起きる前に製造条件を修正できるため、規格外品の発生を未然に防げます。歩留まりの悪化による廃棄ロスを抑え、高品質な製品を安定供給できます。
効果③|点検や記録業務を自動化できる
化学プラントのDX化を進めることで、現場スタッフの大きな負担となっている日常の点検や記録業務を自動化できます。アナログメーターの読み取りや巡回作業を、デジタル技術による遠隔監視へと移行できるからです。
広大なプラントを歩いて回る巡回点検では、計器の数値を手書きで記録し、後でシステムに入力し直す手間がかかります。しかし、計器読み取りAIなどを導入すれば、既存のアナログメーターの数値を自動でデータ化してくれます。
危険を伴う現場へわざわざ足を運ばなくても、安全なコントロールルームから一括で状況を把握できるでしょう。手作業による記入漏れなどのヒューマンエラーも防止でき、より高度な業務に専念できます。
効果④|作業の属人化を防げる
ベテラン社員に依存しがちな業務プロセスを標準化し、属人化を防げるのも大きなメリットと言えます。データとシステムに基づく客観的な判断へ置き換えられるためです。
例えば、複雑な作業手順をデジタル化し、タブレット上でナビゲーション表示することで、誰でも同じ手順で作業を進められる環境を構築できます。その結果、経験の浅いスタッフでも熟練者と同等の精度で作業できるようになります。
効果⑤|ノウハウをデータ化して技術継承を進められる
技術の継承をスムーズに進められるのもDX化による効果のひとつです。長年現場を支えてきたベテランの貴重な知見を、組織全体のデータとして蓄積・再利用できます。
これまで口頭や経験に依存していたトラブル対応履歴や最適な操業データをデジタル化し、ナレッジとして一元管理します。若手社員は、必要な時に過去の類似事例を瞬時に検索して参考にできるでしょう。
人材不足が懸念される中、企業の技術力を繋ぐための強力な施策です。
化学プラントにおけるDXの進め方を3ステップで解説

化学プラントのDXは、いきなり全社規模で大規模なシステムを導入しようとすると失敗するリスクが高まります。
ここでは、失敗を防ぎながら着実にDXを推進するための具体的な3ステップを解説します。
▼化学プラントにおけるDXの進め方を3ステップで解説
- ステップ①|課題を明確にし対象業務を絞る
- ステップ②|小規模なPoCから導入して効果を検証する
- ステップ③|効果が出た施策を現場全体へ展開する
ステップ①|課題を明確にし対象業務を絞る
DXを進めるには、自社の課題を洗い出し、デジタル技術を適用する対象業務を絞り込むことが大切です。ツールありきで導入すると、現場ニーズと乖離し、定着せずに失敗するリスクが高まります。
現場担当者へのヒアリングを通じて「巡回点検の負担が大きい」「手書きの帳票入力に時間がかかっている」といったリアルな悩みを可視化します。その上で、アナログな作業が多く残っており、デジタル化による効率化の効果が実感しやすい領域を優先的に選定しましょう。
ステップ②|小規模なPoCから導入して効果を検証する
対象業務が決定したら、まずはPoC(概念実証)と呼ばれる小規模なテスト導入を行い、システムの効果を検証しましょう。いきなりプラント全体に新しいシステムを展開すると、予期せぬトラブルが起きた際の影響が大きくなり、現場の混乱を招く恐れがあるからです。
例えば、工場内の一部の設備や特定の製造ラインだけに、AIによる画像判定や遠隔監視カメラを試験的に導入します。導入前と比べて点検時間がどの程度削減できたかなど、明確なKPIを設定し、費用対効果を客観的に測定します。
小さく試して課題を素早く修正するサイクルを回すことで、本格導入に向けた失敗のリスクを最小限に抑えることが可能です。
ステップ③|効果が出た施策を現場全体へ展開する
小規模な検証で効果が確認できたら、成功した施策をいよいよ現場全体へと横展開していく段階に入ります。
拡大フェーズにおいては、新しいシステムをスムーズに現場へ定着させるための、明確な運用ルールの整備が欠かせません。また、現場スタッフがツールを使いこなせるように、操作マニュアルの作成や教育体制の構築も並行して進める必要があります。
小さな成功事例を組織全体に波及させ、日々の業務にデジタル技術を根付かせることで、DX本来の価値が発揮されます。
化学プラントDXの事例

実際に化学プラントでDXを導入し、成果を上げている企業の事例を紹介します。
▼化学プラントDXの事例
- 事例①|三菱ケミカル
- 事例②|三井化学
- 事例③|旭化成
事例①|三菱ケミカル
三菱ケミカルは、プラントのDX化によって、現場スタッフの心身の負担軽減と、効率的なプラント運営を実現しています。
背景には、設備の老朽化や労働力不足の深刻化があります。特に、特殊加工を伴う設備や高温環境での作業など、安全性や作業条件の複雑さから、人手に依存せざるを得ない業務が多く存在していました。
こうした課題に対し、同社はICT・IoT・AIといったデジタル技術を活用し、製造現場のDXを推進。具体的には、従来は中央計器室でしか見られなかった設備データを、タブレットを用いて現場で確認・操作できる「リモートDCS」を導入しました。
また、若手社員を中心にDX推進コミュニティを立ち上げ、AIを用いた品質予測や、危険を伴うロール清掃作業の自動化なども進めています。これらの取り組みにより、現場の安全性や作業効率が飛躍的に高まりました。
事例②|三井化学
三井化学は、AIによる高精度な異常予測システムを導入し、属人化していた品質管理の標準化に成功しました。
同社は2000年代初頭からAI活用に取り組んでいました。しかし、当時は学習データの作成負担や過学習の問題、設備の経年変化による精度低下などの課題があり、実用化にはいたらなかったのが実情です。
その後、2015年以降はIoT・AIの進化を背景に方針を転換。自社開発にこだわらず、外部パートナーと連携しながらDXを推進する体制へと移行しました。
具体的には、合成ガス製造プロセスにおいて、温度・圧力・流量など51種類のデータをもとに、ディープラーニングを用いた「ガス濃度予測AIモデル」を構築。約20分後のガス濃度を±3%の精度で予測することに成功しています。
これにより、従来は熟練オペレーターの経験や勘に依存していた品質調整をデータで再現可能となり、異常の予兆検知や事前対応が実現しました。
事例③|旭化成
旭化成では、データ解析を活用したプラント保全の高度化により、設備の信頼性向上と安全性の強化を実現しています。
化学プラントでは、設備の高経年化に伴い、保温材に覆われた機器の外面が腐食する「保温材下腐食(CUI)」への対応が重要な課題です。しかし、CUIは外観から状態を把握しにくく、従来は点検や予測の精度に限界がありました。
こうした課題に対し、旭化成は業界各社と連携し、大量のCUI検査データを収集・解析することで、腐食の発生を予測するモデルを開発。従来の予測手法と比較して高精度であることが実証されています。
本取り組みは、経済産業省の「インフラメンテナンス大賞(優秀賞)」を受賞しており、現在は診断サービスとして事業化も進められています。
まとめ:化学プラントDXで生産性と安全性を高めよう

化学プラントのDXは、人手不足などの現場課題を解決し、安定操業を実現するために不可欠です。まずは現場の痛みを洗い出し、小規模な検証(PoC)から小さく始めることが失敗を防ぐ秘訣です。
本記事で紹介した先進企業の事例も参考にしつつ、効果が出やすい領域から着実に変革を進めていきましょう。もし導入手順やツールの選定で迷いがあれば、専門知見を持つパートナーへの相談も有効な手段です。
NBKマーケティングでは、化学プラントにおけるDX推進に向けて、現場課題の整理から施策設計、導入支援まで一貫してサポートしています。
「何から始めるべきか分からない」「自社に合ったDX施策を知りたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社の状況に合わせた最適なDX推進プランをご提案いたします。

