定修(定期修繕・定期点検)を効率化するには?工期短縮・省人化につながる7つの方法を業界の調査・事例から解説

定修を効率化するには、計画・手続き・資材・現場対応・点検方法を一体で見直すことが欠かせません。人手不足や時間外労働の上限規制で、従来の「人を集めて短期間でこなす」やり方は限界に近づいています。本記事では、業界団体の報告書やメーカー・施工会社の情報など9つのサイトを調べ、定修を効率化する7つの方法を事例とあわせて解説します。


定修とは

定修とは、「定期修理」の略で、プラントなどの生産設備を一定期間止めて、点検・修理・部品交換をまとめて行う大規模な保全作業のことです。

消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法などで設備の定期的な点検が求められており、安全・安定操業の土台となる業務です。

定修の規模は非常に大きく、石油化学工業協会が事務局を務める定期修理研究会の報告(2019年)では、エチレン製造装置の定修例として次の数字が示されています。

項目規模(エチレン製造装置の例)
工事期間約2か月
作業員数ピーク時 約3,000人/日(延べ 約73,000人)
工事費用80〜100億円程度

日刊工業新聞の報道でも、化学プラントの定修には協力会社の作業員が延べ15万〜16万人参加し、ピーク時には1日4,000人が出入りする例や、定修が1日遅れると億円単位の損失が出ることが紹介されています。


定修の効率化が求められる理由とは

定修の効率化が求められる理由とは、人手・労働時間・工期の制約が年々厳しくなる一方で、停止期間が延びたときの損失が非常に大きいためです。

調べたサイトで共通して挙げられていた課題は、次の5つです。

  1. 人手不足と熟練者の高齢化:経験豊富な技能者が減り、若手への技術継承も追いついていません。
  2. 時間外労働の上限規制:2024年4月から建設業にも上限規制が適用され、長時間労働を前提にした工程は組めなくなりました。定期修理研究会の報告でも、従来の工期のままでは規制の順守が難しいと指摘されています。
  3. 春・秋への集中:真夏や真冬を避けるため定修が春と秋に集中し、作業員や機材の取り合いが起きやすくなります。製品の需給が不安定になる要因にもなっています。
  4. 「開けてみないとわからない」不確実性:設備を開放して初めて腐食や図面との違いが見つかり、部品の手配待ちや手戻りが発生します。
  5. 停止による損失:定修中は生産が止まるため、工期の遅れがそのまま機会損失や追加費用(人件費、重機・仮設材のリース代など)につながります。

定修を効率化する7つの方法とは

定修を効率化する方法とは、工期を延ばす原因になる「待ち時間」「手戻り」「付帯作業」を、計画段階から減らしていく取り組みのことです。

方法1:定修時期を分散し、早い段階で計画する

定修時期の分散とは、各社の定修が同じ時期に重ならないように調整し、作業員や機材の取り合いを減らす取り組みのことです。

石油化学業界では、定修時期の分散や工事量の平準化が業界全体の課題として議論されています。自社でも、設備の重要度や劣化状況で優先順位をつけ、協力会社と早めに役割分担を決めておくことが、人員と資機材を確保する近道です。

方法2:工程を「見える化」し、作業許可を電子化する

作業許可の電子化(e-PTW)とは、紙と押印で行っていた作業許可の申請・承認を、システム上で行う仕組みのことです。

定修には多くの会社が関わるため、紙やExcel、口頭での管理では「誰が・どこで・何をしているか」が見えにくく、待ち時間や作業の重複が生まれます。工程と許可手続きを共通のシステムで管理すると、進捗をリアルタイムで共有でき、遅れにも早く気づけます。

電子作業許可システムを提供するGOARC社は、導入現場の事例として、延べ作業員数10%以上の削減、作業期間15%の短縮、着工許可の手続き時間を3分の1に短縮した結果を紹介しています(同社の個別事例であり、業界の平均値ではありません)。定期修理研究会も、着工許可証の様式や手続きの統一、行政手続きの電子化を提言しています。

方法3:資材・部品を早めに確保し、事前に組み立てておく

資材の事前確保とは、定修で必要になりそうな部品や特注品を、工事が始まる前に手配・在庫しておくことです。

流体制御機器メーカーのスウェージロック社は、効率的な定修のポイントとして、主要サプライヤーと早くから連携して特注部品の納期を把握すること、プロジェクト用の在庫を一時的に確保すること、事前に組み立てやテストを済ませて現場での取り付けを簡単にすることを挙げています。

方法4:現場で加工・補修できる体制で「手配待ち」をなくす

現場加工力とは、トラブルが見つかったときに、その場で寸法を測り、切断・溶接・補修まで行える施工力のことです。

定修では、設備を開けてから予想外の腐食や破損が見つかることがよくあります。そのたびにメーカーへ部品を発注したり、別の業者を手配したりすると、作業が止まります。機械据付・解体工事などを手がけるタテヌマテクノ社は、解体・搬出と溶接・製缶加工を同じチームで行い、業者間の調整や手配待ちをなくすことが工期短縮につながると説明しています。

方法5:設備と建屋のメンテナンスを同じ定修でまとめて行う

設備と建屋の一体計画とは、屋根・外壁・防水などの建屋修繕を設備の定修と同じ期間に計画し、足場や停止を1回で済ませる考え方のことです。

建屋修繕を別の時期に行うと、足場の設置や生産停止の調整が二重に発生します。塗装・修繕工事会社の竹山美装社のコラムでは、設備と建屋の修繕リストを1つにまとめ、「今回やる工事」と「次回に回す工事」を整理すること、資材搬入や足場配置を1枚の図にまとめて干渉をなくすことを勧めています。

方法6:保全DXと予知保全で、点検の範囲と手間を減らす

予知保全とは、センサーやデータで設備の状態を常に監視し、劣化の兆候をつかんでから必要な箇所を修理する保全方法のことです。

状態がデータでわかれば、定修で手を入れる範囲を絞り込めます。富士電機社が紹介する保全DXの事例には、次のようなものがあります。

取り組み紹介されている効果
設備保全管理システムの導入保全計画の作成工数 約90%削減、点検・実績入力工数 約50%削減
遠隔作業支援システム通常2日かかっていたトラブル対応を約10時間に短縮
回転機の振動監視(予兆検知)最大3,000万〜7,000万円の損失を回避
特別高圧受変電設備へのスマート保安の適用設備の健全性をデータで示すことで、法定の年次点検周期を3年に延長できる

このほか、3Dスキャンで作ったデジタルツイン(設備の3Dモデル)で事前に作業をシミュレーションし、現場での手戻りを減らす方法も紹介されています。

方法7:点検ロボットで、足場と危険な作業を減らす

点検ロボットの活用とは、高所・狭い場所・危険な環境など、人が近づきにくい箇所の点検をロボットに任せることです。

高い所の配管の点検では、足場の組立・解体に日数と費用がかかり、その分だけ定修期間が延びます。ロボットで足場なしに点検できれば、付帯作業そのものを減らせます。次の章で、NBKマーケティングが取り扱う点検ロボット「Float Arm(フロートアーム)」を紹介します。


定修を効率化する点検ロボット「Float Arm」とは

Float Arm(フロートアーム)とは、東京科学大学発のベンチャー企業ハイボット(HiBot)社が開発した多関節型(ヘビ型)の点検ロボットで、高所や狭い場所、危険な環境での点検を人に代わって行います。

NBKマーケティングは、ハイボット社の代理店としてFloat Armを提供しています。もともとは福島第一原子力発電所の廃炉作業のために開発されたロボットです。

Float Armで定修が効率化できる理由

  1. 足場がいらない:アームを伸ばして高い所の配管に届くため、足場の組立・解体が不要です。
  2. 危険な場所に人が入らない:放射線、有毒ガス、高温など、健康リスクのある場所も遠隔で点検できます。
  3. 1台でさまざまな点検ができる:先端に高解像度カメラ、超音波(UT)センサ、コの字型の放射線(RT)センサ、サーモカメラ、3Dレーザースキャナーなどを付けられます。保温材を剥がさずに内部を調べることもできます。
  4. 準備が簡単:関節をねじで留めていくだけで、組立は30分程度です。業務用バッテリーで動くため、電源工事もいりません。
  5. 点検の半自動化:3D LiDARで点検対象の点群データを事前に取得し、点検の半自動化やレポート作成の効率化ができます。

停止期間の短縮効果(試算例)

NBKマーケティングの資料では、足場の設置と点検で7日かかっていた作業が2日になった場合の試算を紹介しています。停止期間が5日短くなるため、1日の生産高が1,000万円のプラントなら、約5,000万円の損失を防げる計算です(実際の効果は現場の条件によって変わります)。

Float Armの主な仕様

項目内容
最大アーム長5m(伸長ユニット装着時 7.5m)
質量40kg(1〜6リンクの合計。ベースと伸長ユニットを除く)
積載量2.5kg
関節数9
使用環境温度-10℃〜40℃
電源業務用バッテリー(電源工事不要)

導入事例

導入先課題導入効果
BASF(ドイツ)高所のパイプラックの点検で、足場の設置から検査まで多くの時間と費用がかかっていたカメラによる目視や超音波による肉厚測定などを、早く効果的に行えた
三井化学(日本)高所のパイプ棚の点検で、足場工事に時間と費用がかかっていた足場工事が不要になり、時間と費用を大幅に削減。3Dデータをもとにすき間を通り抜け、細かい画像を取得できた

受賞歴として、点検ロボットの普及団体SPRINT Roboticsで1位(2020年)、ロボティクスのイノベーション会議GRIC 2024で最優秀賞を受けています。


定修の効率化を進める手順とは

定修の効率化を進める手順とは、いきなり全体を変えるのではなく、効果の大きいところから順に取り組みを広げていく進め方のことです。

  1. 前回の定修を振り返る:工期が延びた原因(手配待ち、手続き待ち、足場、手戻りなど)を洗い出します。
  2. 優先順位を決める:停止期間への影響が大きく、改善しやすいものから手をつけます。
  3. 小さく試す:特定の設備やエリアで新しい仕組みやロボットを試し、効果を確かめます。
  4. 数字で効果を測る:工期、延べ作業員数、費用などを前回と比べ、次回の計画に反映します。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 定修とは何ですか?
A. 「定期修理」の略で、プラントなどの生産設備を一定期間止めて、点検・修理・部品交換をまとめて行う大規模な保全作業です。法令で求められる点検も含まれます。

Q2. 定修の期間はどれくらいですか?
A. 設備によって異なります。化学業界の解説サイトChemAtelsでは、1年に1回や4年に1回などの頻度で、約2週間〜2か月間すべての稼働を止めて行うと説明されています。定期修理研究会の報告では、エチレン製造装置の定修例として工事期間約2か月が示されています。

Q3. 定修の効率化で、まず取り組むべきことは何ですか?
A. 前回の定修で工期が延びた原因を洗い出すことです。手続き待ちが多ければ作業許可の電子化、部品の手配待ちが多ければ資材の事前確保、足場が多ければ点検ロボットというように、原因に合った方法を選ぶと効果が出やすくなります。

Q4. 点検ロボットを使うと、なぜ定修期間が短くなるのですか?
A. 高所の点検に必要だった足場の組立・解体という付帯作業をなくせるためです。Float Armの試算例では、足場の設置と点検で7日かかっていた作業が2日になり、停止期間を5日短縮できるとしています。

Q5. Float Armの導入相談はどこにすればよいですか?
A. NBKマーケティング株式会社のお問い合わせページからご相談ください。点検対象の条件をお知らせいただければ、対応できるかを確認します。


まとめ

定修を効率化するには、工期を延ばす「待ち時間」「手戻り」「付帯作業」を減らすことが基本です。時期の分散と早期計画、工程の見える化と作業許可の電子化、資材の事前確保、現場加工力、設備と建屋の一体計画、保全DX、点検ロボットの7つを、自社の課題に合わせて組み合わせましょう。

なかでも足場が必要な高所の点検は、Float Armで足場なしに行えるため、定修期間の短縮と安全性の向上を同時に実現できます。

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