公開日:2026年10月 | NBKマーケティング株式会社


プラントの定期点検(定修)は、屋外の高い場所にある配管や設備を対象にすることが多く、強風・大雨・猛暑などの天候に大きく左右されます。 法令では、高さ2m以上の作業は悪天候で危険が予想されるときに行ってはならないと定められており、夏には熱中症のリスクも高まります。そこで注目されているのが、天候の影響を受けにくく、人の代わりに屋外で点検できる「全天候型」の点検ロボットです。本記事では、定期点検に全天候型が求められる理由、点検ロボットの種類と選び方、そして**防じん・防水性能IP65を備え、足場なしで高所の配管を点検できる多関節ロボット「フロートアーム(Float Arm)」**を、公的資料やメーカー資料をもとにわかりやすく解説します。

屋外のパイプラックで配管を点検するFloat Arm
高所作業車に取り付けたFloat Armが、屋外のパイプラックの配管のすき間に入り込んで点検しているようす(画像:NBKマーケティング製品ページより)

【注目】屋外の高所配管の定期点検を、足場なしで

**フロートアーム(Float Arm)**は、ヘビのように動く多関節ロボットアームで、最大5m(伸長ユニット装着時7.5m)先の配管や設備に近づいて点検できます。防じん・防水性能はIP65(メーカー資料)。高解像度カメラ、超音波による肉厚測定、サーモカメラ、3Dレーザースキャナーなどを先端に付けて、屋外の定期点検を人に代わって行います。
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この記事でわかること

  1. 定期点検(定修)とは
  2. 定期点検に「全天候型」が求められる理由
  3. 屋外設備の点検に使われるロボットの種類
  4. 全天候型点検ロボットの選び方
  5. 屋外の配管点検に強いロボット「Float Arm」
  6. 点検ロボットを定修に取り入れるまでの流れ

定期点検(定修)とは

定期点検(定修)とは、プラントなどの設備を計画的に止めて、点検・修理・部品の交換をまとめて行う作業のことです。 「定期修理」「定期修繕」とも呼ばれ、石油精製所、化学プラント、発電所、製鉄所などで、数年に一度のペースで行われます。

定修では、配管の腐食や肉厚の減り具合、保温材の下の状態、タンクや塔の外観などを、決められた停止期間の中で一気に点検します。停止期間が延びれば、その分だけ生産が止まり、損失が大きくなります。 そのため、定修は「限られた日数で、安全に、確実に終わらせること」が何より大切です。


定期点検に「全天候型」が求められる理由

天候が定期点検(定修)に与える4つの影響を示した図
人が高所・屋外で作業する点検ほど、天候の影響を受けやすくなります

理由1:強風・大雨・大雪の日は、高所作業ができない

労働安全衛生規則第522条は、高さ2m以上の箇所での作業について、強風・大雨・大雪などの悪天候で危険が予想されるときは、作業を行わせてはならないと定めています。

厚生労働省の労働局の資料では、悪天候の目安として次の基準が示されています。

悪天候目安
強風10分間の平均風速が毎秒10m以上
大雨1回の降雨量が50mm以上
大雪1回の降雪量が25cm以上

また、気象注意報や警報が出て、悪天候になることが予想される場合も含まれます。屋外の高所にあるパイプラックやタンクの点検は、天候が崩れると、その日の作業を止めざるを得ないのです。

理由2:猛暑による熱中症のリスクが高まっている

厚生労働省の発表によると、2024年の職場における熱中症による死傷者数は1,257人で、統計を取り始めてから最も多い数字になりました。業種別では、製造業が235人、建設業が228人と多くを占めています。2025年6月には改正労働安全衛生規則が施行され、熱中症のおそれがある作業者を早く見つけるための体制づくりなどが、事業者に義務づけられました。

日差しを遮るものが少ない高所の配管まわりや、保護具を着けたままの作業は、体への負担が大きくなります。夏場の点検では、作業時間を短くしたり、休憩を増やしたりする必要があり、工程にも影響します。

理由3:悪天候の後は、足場の点検からやり直しになる

高所の配管を人が点検するには、多くの場合、足場を組む必要があります。労働安全衛生規則第567条では、強風・大雨・大雪などの悪天候の後に足場を使って作業するときは、作業を始める前に足場を点検し、異常があればすぐに補修しなければならないと定めています。

つまり、天候が崩れると「作業の中断」に加えて「足場の再点検」も必要になり、工程の遅れが重なりやすいのです。

理由4:定修は日程が決まっていて、遅れが損失に直結する

定修は、設備を止める期間があらかじめ決まっています。天候で点検が1日止まれば、その分を取り戻すために人を増やしたり、残業をしたりする必要が出てきます。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用されており、「天候で遅れた分を長時間労働で取り戻す」やり方は、ますます難しくなっています。

こうした背景から、人が高所に上がらずに済み、多少の雨やほこりの中でも使える点検ロボットへのニーズが高まっています。


屋外設備の点検に使われるロボットの種類

屋外設備の点検に使われる主なロボット・機器を比較した図
点検の目的によって、向いているロボット・機器が異なります

屋外の設備点検に使われるロボットや機器には、主に次の4つのタイプがあります。

タイプ得意なこと注意点向いている用途
ドローン高所や広い範囲を短時間で撮影できる強風や雨では飛行が制限されやすい。接触して測る機種は限られる高所の外観確認
走行型ロボット決まったルートを巡回し、メーターの読み取りや異常の検知ができる高所や配管のすき間には届きにくい日常の巡回点検
アーム型(多関節)ロボットアームを伸ばして高所・狭い場所に近づき、超音波の肉厚測定などの接触測定ができる届く範囲はアームの長さまで定修の詳細点検
固定カメラ・センサ設備に取り付けて、常に監視・記録できる設置した場所以外は見られない常時監視

定修で必要になる「配管に近づいて、肉厚や温度を測る」点検には、アーム型(多関節)ロボットが向いています。 ドローンや走行型ロボットと組み合わせて、役割を分けて使うのも効果的です。


全天候型点検ロボットの選び方

全天候型の点検ロボットを選ぶときは、次の5つのポイントを確認しましょう。

ポイント1:防じん・防水性能(IP等級)

IP等級は、ほこりや水の入りにくさを表す規格です。「IP」のあとの1つ目の数字が防じん、2つ目の数字が防水の性能を表します。

  • IP65の場合:「6」はほこりが中に入らない(耐じん形)、「5」はあらゆる方向からの噴流水に対して保護されている(防噴流形)ことを意味します

屋外で使うなら、雨やほこりに耐えられる防じん・防水性能があるかを、まず確認しましょう。

ポイント2:使用温度範囲と、使える風速

冬の早朝や夏の日中など、点検する季節・時間帯の気温で使えるかを確認します。また、高所でアームや機体を動かすロボットは、メーカーが定める風速の上限も大切なポイントです。

ポイント3:点検したい内容に合ったセンサを付けられるか

目視だけでなく、超音波による肉厚測定、温度測定、3次元の形状測定など、定修で必要な点検ができるかを確認します。1台で複数のセンサを付け替えられると、点検の幅が広がります。

ポイント4:持ち運び・設置のしやすさ

定修では、点検場所を次々に移動します。軽くて持ち運びやすいか、組み立てや電源の準備が簡単か、高所作業車などに取り付けられるかを確認しましょう。

ポイント5:設置場所の区分(防爆エリアかどうか)

石油・化学プラントでは、点検場所が防爆エリアにあたる場合があります。防爆エリアで電気機器を使うには、その区分に合った防爆性能が必要です。 点検したい場所の区分を、安全管理部門と事前に確認しておきましょう。


屋外の配管点検に強いロボット「Float Arm」

Float Arm(フロートアーム)とは、東京科学大学(旧・東京工業大学)発のベンチャー企業ハイボット(HiBot)社が開発した、ヘビのように動く多関節型の点検ロボットです。 過酷な場所や危険な場所、配管などの定期点検(定修)を、人に代わって行います。NBKマーケティングは、ハイボット社の代理店としてFloat Armを提供しています。

ハイボット社は、極限環境で使うロボットの開発に特化してきた企業で、同社のロボットは福島第一原子力発電所の廃炉作業などの現場でも使われています。

Float Armが屋外の点検に強い理由を示した図
屋外の点検で大切な性能を、メーカー資料と製品ページからまとめました

Float Armが「全天候型」の点検に向いている理由

  • 防じん・防水性能IP65:ハイボット社の製品資料(英語版)によると、Float ArmのIP等級は65です。ほこりが入らず、噴流水にも耐える設計で、同資料では屋外での用途(OUTDOOR APPLICATIONS)も特長として挙げられています。
  • 使用温度は-10℃〜40℃、風速7m/sまで:同資料では、使用温度範囲が-10℃〜40℃、使用できる風速が7m/sまで、湿度は20℃で90%までとされています。冬の早朝から夏の日中まで、幅広い条件で使えます。
  • 人が高所に上がらずに点検できる:作業者は地上の安全な場所から遠隔で操作します。強風の中で足場に上がったり、炎天下の高所に長時間とどまったりする必要が減ります。
  • 足場がいらない:アームを伸ばして高所や狭い場所に届くため、足場の組み立て・解体が不要になります。悪天候の後の足場の再点検も必要ありません。

Float Armの主な特長

  1. ヘビのように柔軟な動き:9つの関節を持ち、関節には「ハーモニック・ドライブ」という精密歯車システムを採用しています。パイプラックの複雑なすき間にも入り込めます。
  2. 1台でさまざまな点検ができる:先端に、高解像度の検査カメラ、複数のナビゲーションカメラ、超音波検査(UT)センサ、コの字型の放射線(X線)透過検査(RT)センサ、サーモカメラ、3Dレーザースキャナーを装着できます(装着できるデバイスは継続的に拡張されています)。
  3. 人が入れない場所も点検できる:狭い空間の目視点検や、配管の肉厚測定・温度測定・3次元測定を、Float Armで代わりに行えます。
  4. 持ち運びやすく、電源工事がいらない:持ち運びやすい軽量設計で、地上から業務用バッテリーで電源を供給するため、電源工事が不要です。ドローンより長い時間動かせます。
  5. 点検の半自動化:3D LiDARを利用することで、点検の半自動化も可能です。

Float Armの主な仕様

項目内容
最大アーム長5m(伸長ユニットを装着の場合は7.5m)
質量40kg(1〜6リンクのトータル。ベースと伸長ユニットを除く)
積載量2.5kg
関節数9
使用可能なセンサーHDカメラ、赤外線カメラ、超音波探傷プローブ、ライダー、TOFカメラなど
IP等級IP65(メーカー資料)
使用温度範囲-10℃〜40℃(メーカー資料)
使用可能な風速7m/sまで(メーカー資料)

※ 最大アーム長・質量・積載量・関節数・センサーはNBKマーケティング製品ページ、IP等級・使用温度範囲・風速はハイボット社の製品資料(英語版)によります。

導入事例

導入先内容
BASF社 Antwerpen工場(ベルギー)2023年にFloat Armの商用機第1号を納品。パイプラック施設や圧力タンク内部など、人の立ち入りが制限される場所での点検に活用。足場建設が不要になり、点検の時間とコストを大幅に削減できるとされています
三井化学株式会社 大阪工場Float Armを用いた産業インフラ施設の点検を実施(2022年7月発表)。高さ20mの鉄塔の高い位置にある箇所を点検し、3Dデータをもとにパイプラックと構造物のすき間を通り抜けて撮影。足場が不要になり、時間と費用を大幅に削減

受賞歴として、点検ロボットの普及団体SPRINT Roboticsで1位(2020年)、ロボティクスのイノベーション会議GRIC 2024で最優秀賞を受けています。

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点検ロボットを定修に取り入れるまでの流れ

点検ロボットを定修に取り入れるまでの流れを示した図
課題の洗い出しから定修計画への組み込みまでの、一般的な流れの例です

  1. 点検対象と課題を洗い出す:足場が必要な高所、天候で止まりやすい屋外の点検など、ロボット化の効果が大きい箇所を選びます
  2. 点検内容と条件を確認する:目視・肉厚測定・温度測定など必要な点検と、設置場所の条件(区分・風・気温)を確認します
  3. ロボットと搭載センサを選ぶ:届く距離、積載量、防じん・防水性能、使用温度などを、点検内容に合わせて比べます
  4. 小さく試して効果を測る:一部の設備で試験的に導入し、工期・人数・費用・データの質を従来の方法と比べます
  5. 定修計画に組み込む:天候に左右されにくい点検をロボットに任せ、工程表や保全計画に反映します

「この配管にFloat Armは届くか」「どのセンサを付ければよいか」など、導入前のご相談もNBKマーケティングで承っています。

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関連コラム


よくある質問(FAQ)

Q1. 全天候型の点検ロボットとは何ですか?
A. 雨やほこり、気温の変化など、屋外の天候の影響を受けにくい設計の点検ロボットのことです。防じん・防水性能(IP等級)や使用温度範囲、使える風速などで、どこまでの条件に対応できるかを確認します。

Q2. Float Armは雨の日でも使えますか?
A. Float Armは防じん・防水性能IP65(メーカー資料)で、噴流水に対して保護される設計です。ただし、使用できる風速(7m/sまで)や温度(-10℃〜40℃)などの条件があります。実際の運用条件については、事前にご相談ください。

Q3. なぜ悪天候の日は高所の点検ができないのですか?
A. 労働安全衛生規則第522条で、高さ2m以上の箇所での作業は、強風・大雨・大雪などの悪天候で危険が予想されるときは行ってはならないと定められているためです。目安として、強風は10分間の平均風速が毎秒10m以上とされています。

Q4. 足場を組まずに高所の配管を点検できますか?
A. Float Armなら可能です。アームを最大5m(伸長ユニット装着時7.5m)まで伸ばし、高所作業車などに取り付けて使うことで、足場なしで高所の配管に近づいて点検できます。

Q5. どんな点検ができますか?
A. 高解像度カメラによる目視点検のほか、超音波による配管の肉厚測定、サーモカメラによる温度測定、3Dレーザースキャナーによる3次元測定、放射線(X線)透過検査などができます。


まとめ

  • 定期点検(定修)は屋外の高所作業が多く、強風・大雨・大雪では作業が止まり(安衛則第522条)、悪天候の後は足場の再点検も必要(安衛則第567条)
  • 2024年の職場の熱中症による死傷者は1,257人で過去最多。猛暑も点検の大きな妨げになっている
  • そこで、人の代わりに屋外で点検でき、天候の影響を受けにくい「全天候型」の点検ロボットが注目されている
  • 選ぶときは、IP等級・使用温度と風速・センサ・持ち運びやすさ・設置場所の区分を確認する
  • Float Armは、IP65の防じん・防水性能を備え、足場なしで高所の配管に近づいて肉厚測定などができる多関節ロボット

屋外の定期点検を、天候に左右されにくく、より安全にしたい方は、お気軽にNBKマーケティングへご相談ください。



参考資料

  1. ハイボット「Float Arm」製品資料(英語版PDF) https://hibot.co.jp/wp-content/themes/hibot/pdf/float-arm/float-arm.pdf
  2. ハイボット「Float Arm」製品ページ https://hibot.co.jp/ja/float-arm/
  3. ハイボット「インフラ点検ロボット Float Arm商用機第1号をBASF社に納品」(2023年10月12日) https://hibot.co.jp/news-ja/インフラ点検ロボット-float-arm商用機第1号をbasf社に納品/
  4. ハイボット プレスリリース(PR TIMES、2022年7月:三井化学大阪工場での点検実施) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000055802.html
  5. e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(第522条・第567条) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
  6. 富山労働局「悪天候時における労働災害防止対策の徹底について」 https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/library/toyama-roudoukyoku/topics/topics377/akutenkoutopics377-5.pdf
  7. 労働政策研究・研修機構「職場における熱中症による死傷者数が1,257人となり過去最多に」(ビジネス・レーバー・トレンド 2025年7月号) https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/07/kokunai_01.html
  8. 日本電熱「防爆の危険場所について」 https://www.nichinetu.co.jp/elementary/failsafe/basicKnowledge/danger-points/

本記事の情報は2026年10月時点のものです。点検ロボットの使用条件は、設置場所や搭載するセンサによって異なります。導入にあたっては、事業所の保安ルールに従い、安全管理部門などにご確認ください。

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